2011年7月11日月曜日

風車開発の傾向 AWEA 2011 Wind power engineering(p36-37)より

今回は長いので、「まとめ」を入れてみた。


【まとめ】
     不況問題
不況によって、昨年は風車が売れなかった。今年は異なると予想。
     政策
 1603キャッシュグラント、PTCなどの政策による補助金に導入量は大きく左右される。第四四半期に駆け込み受注発生などがある。継続的な補助が必要。
     インフラ問題
中西部の送電網が弱い。送電網の脆弱さが導入の妨げになる。
FRECは送電網の問題を消費者に転嫁する方式も導入。
     建設中
大きなプロジェクトがある。一方で新しいメーカーの参入もある。
     風車メーカー
各国のメーカーが入ってきている。(Alstom Sany 金風など)
特に中国は中央人民銀行の融資とのコンボで攻めてきているので、強い。
一方で、通貨レートのリスクと制裁リスクがある。
     洋上風車
船舶の売り上げ向上や、建設可能地域の増大などの利点があるが、「教育、国家の補助、大型化、企業の捨て身の体制」がないと難しい。

【訳】
風力発電は、アメリカで最も急成長を遂げている再生可能エネルギーであり、風力発電開発者は、より効率がよく、コスト効率が良く、かつ儲かるやり方が求められている。
 2010年にアメリカの風力機械設計課業界は、前年の10000MWから、約50%減少の5116MWの風力発電を導入した。しかしながら、2009年に建設された風車が2008年の慣性に主導されていた。というのは、開発業者は例外的な成長が継続することを予測して、多数の風車を建てる傾向にあったためだ。2009年に世界的に金融市場が落ち込んだことを受け注文も新規開発も落ち込んだ。
 しかしながら、2010年が終わり、議会は、1603キャッシュグラント訳注. 特定の条件下で税金を免除する法律)を延長したくないように見えた(訳注. 201210月まで延長済み)。そのため多くの業者は、「みなし建設終了」をすることで、手遅れになる前に1603キャッシュグラントを受けられるようにした。
迫り来る特典の終了日は、「建設中サイト」を20101231日現在で5600MW(うち第4四半期分が3000MW)という過去最高に引き上げた。
 12月終わりごろには、議会は、包括的税制法案とともに、1603キャッシュグラントを延長した。この1年間の延長は、市場の延命に役立った。しかし、我々は議会が再生可能エネルギーに恒久的かつ堅固な貢献をする意思がないと見ている。2011年末には1603は期限が切れる、そして2012年末にはProduction Tax CreditPTC)が失効する。
 もし全てが計画通りに行くと、代わりになるものが何もないままに風力発電を支える二つの大きな政策の援護がなくなってしまう。

・インフラの問題
開発業者にとって、インフラの不整備が近年問題になっている。アメリカ中西部と大草原地帯は地上有数の風資源を持っている。残念なことに送電能力が十分でなく、沿岸部の需要の多い地帯に送ることができない。
 オレゴンに本拠地を持つ、PacifiCorp社は、現在このジレンマにどっぷり浸かっている。Mid-American Energy Holdingsの子会社であるPacifiCorp社は、アメリカでは最大の風車サイト開発業者である。彼らは、現在まで毎年新規プロジェクトをしてきた。
 しかしながら、最後のプロジェクトは201012月にコミッショニングが終了し、次のプロジェクトは、2017年完成までない。理由は発電能力がないことではなく、送電能力がないことである。
 開発上の問題を回避する企てとして、Federal Energy Regulatory Commission(FERC)は、「棄てられた発電所認定」といわれる制度をはじめた。
 これは、FERCSouthern California EdisonOklahoma Gas and Electricに適用した送電リスクやインフラの更新を基本的に取り除き、その費用を電力需要者に転嫁するものである。
 その名のとおり、もし制御範囲外のことが起きたら、公共施設はそのインフラコストやこうむった維持費用などについては責任がないものとするということだ。
 「この認定制度は、2013年、2014年のプロジェクトを助けることになるだろう。というのは、これらの要請や規則は成立までに時間がかかるからだ。これは短期的な問題解決ではなく、中長期の問題解決になる。」とRESアメリカ社のSVPであるScott Piscitello氏は言う。

・建設中プロジェクト
 現在建設中の最大のプロジェクトは、ワシントン州のPuget Sound Energy(PSE)である。Lower Snake Riverプロジェクトは、1432MWの計画で、3つのフェーズに分かれている。
一つ目は、149台のSiemens2-3MWの機種を建てて343MW。この設備は、RESアメリカとPSEがする3つ目のプロジェクトで、2011年末までに建設終了予定である。
 この開発の推進力は、カルフォルニア集の再生可能エネルギーポートフォリオ基準が認可されたことによる。契約者のRESアメリカによると、風資源に近いカルフォルニアの状況から、今年中には2番目のフェーズが開始するとのことだ。
 そこから、そう遠くないオレゴンで、Caithness EnergyShepherd’s Flatウィンドファームを建設している。この計画では、GE2.5XL338台で、845MWの出力をBonneville Power Administrationに供給する。
 このプロジェクトは、大体年間20kWhの発電量と大体35人分の長期雇用を生み出すことが予測されている。
 大きなプロジェクトではないが、Ralls Corpが持っている10MWTexas Rallsウィンドファームでは、米国では初めて、Sany2.0MW風車を導入する予定だ。
 これは、2009年 金風アメリカが、ミネソタに3台の1.5MW機を導入して以来の中国製風車の導入の発達に寄与するだろう。

・さまざまな風車メーカー
もうひとつの、大きなトレンドは、デベロッパーが風車を売ろうとする場合、風車メーカが多岐にわたることである。前にも述べたように、Sanyは最初の10MWを設置する準備中である。また、フランスのAlstom社は、19.8MWDanielsonウィンドファームに加わる予定です。韓国の2社も標準を合わせてきている。その1社であるUnisonは最初の納入品を建設中であるし、現代重工はニューヨークに3.3MW機を納入している。近年中国メーカーと中国人民銀行は、中国製の風車を購入する場合のファイナンスを積極的に進めている
この調整は、Sanyや金風USAA-power他に有利に働いている。
これらのメーカーは、競走上有利であるが、通貨レートを考えないのは慎重とはいえなし、中国政府が風車価格を保護することに対して、アメリカが制裁する可能性も考慮すべきである。

・洋上の傾向
 洋上風車のトレンドは現在急進中である。しかし、その開発の中心は、土台や建設装置、船などの風車周辺に限られる。洋上風車産業は、Cape Wind開発が粘り強く(10年も)試験を繰り返し、とうとうアメリカの洋上に風車を建設することが、寛容された。
洋上に風車を建設することは、可能性を拡大し、同時に、新たな課題をメーカーに投げかけた。
洋上という立地条件は、開発者にとって、魅惑的であった。というのは、洋上に建設することで、NIMBY(うちの裏庭に建てるな)派の文句を言う人たちが少なく、また、キャパシティファクターを上昇させることができた。フィンランドのデベロッパーは、キャパシティファクターは、平均40%であり、陸上でも良く動くほうの風車の30%を大幅に上回っている。そしてヨーロッパにある、ある浮体式風車の風車では、60%に達したという。
 この中でコストダウンをすることは、特にはっきりしている。風車を水中に建てるということには、陸上に建てる場合の最低2倍のお金がかかる。最もコストに跳ね返ってくるのは、より強い風と塩分を含む飛沫に耐える風車を建設することである。
現在までに、候補になっているのは、Cape Windの3~5MWの風車と、東海岸のエリー湖に建てられた4MWの風車のみである。
近年の洋上風車の技術に関する会議で、American Superconductor社の副社長John Collett氏は、米国が洋上風車を持つために必要な条件をいくつか提示した。
     連邦政府が、PTCProduction Tax Credit)やRESRenewable Electricity Standard)のような長期的なインセンティブとゴールを提示すること。
     いかに洋上風車が経済的な面、またエネルギーの独立という観点から重要であるかを、大衆に教育すること。
     アメリカの産業が、確実なものだけに集中するのではなく、思い切ったメンタリティで動いてみること。
     少数の5MW級の風車があるが、コスト低減にはさらに大きな風車が必要であること。
である。
浮体式にするか、否か?という問題もあるが、デベロッパーにとって、現実的には、30m程度の浅い海では、モノポールで海底に固定する方法がよいが、25m50m程度の深さならば、三脚式が有利である。
Cape Wind もエリー湖も、モノポールを用いる予定である。
より深い海では、浮体式が有用である。いくつかの方法が提案されているが、一長一短である。しかし浮体式ならば、くい打ち作業がないため、建設騒音を最小限にできる。
また、深海ほど、栄養分や光がとどかないため、生態系への影響が軽減できる。
これらの計画が進めば、より多くの船舶などの装置が必要になり、東海岸沿いに良い影響があるだろう。この件に関するニュースとして、ジャッキアップできるバージ船が建設中だという。――――――AWEA 2011 Wind power engineering(p36-37)より翻訳

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